シンポジウム「昆虫と植物: それぞれの戦略」
3月25日(月)午後に、つくば国際会議場(〒305-0032 茨城県つくば市竹園 2-20-3)にて、「昆虫と植物: それぞれの戦略」というテーマで4名の方に話題を提供していただきます。多くの方のご参加をお待ちしております。参加費は無料です(事前申込も必要ありません)
- シンポジウム「昆虫と植物: それぞれの戦略」ポスター (PDF|2.20MB)
シンポジウムの趣旨
本シンポジウムでは、昆虫と植物の関係を対象にして「知りたいこと、わかりたいこと」に真摯に向き合い、昆虫少年・少女もワクワクするような研究をしている方々を紹介する。植物は、食物網の基盤として昆虫や草食動物のみならずヒトをも支える存在である。従って、昆虫と植物の関係を知ることは、基礎・応用の両面から重要な知見をもたらす。例えば、ニコチン、ロテノン、ピレスロイドなどの植物が産生する様々な二次代謝産物を、我々は殺虫剤として、また、そのリード化合物として利用してきた。昆虫を送粉者として上手に利用するにも、昆虫と植物の関係をよく知ってこそのことである。訪花昆虫の種類、訪花頻度、授粉効率、それらに影響する匂い因子などを知ることなしに、効率的な結実・採種は難しい。一方、ヒトが持つ知的好奇心を満たそうとする欲求は、目の前で繰り広げられる自然界で起こる事象に対しても素直に向けられる。海岸でたまたま拾った琥珀の中に、白亜紀(1.5億年~0.7億年前)のハチの化石が入っていたら、そのころの昆虫と植物の関係はどのようなものだったのか知りたいと思うのはごく自然である。昆虫と植物の関係は、シルル紀(4.5億年~4.2億年前)にまでさかのぼることができるという。陸上植物が出現し、その後を追うように原始的な昆虫が現れた。恐竜で有名なジュラ紀が2億年~1.5億年前、現生人類の誕生はせいぜい20万年前であるから、昆虫と植物の関係はケタ違いの昔ながらの関係といえる。何度かの絶滅期を潜り抜け、昆虫と植物がそれぞれの戦略で現世に命をつないできた。その結果をどう捉え、解釈するか。最終演者のRaguso教授が話題提供するハエ目は、2.6億年ほど前から三度の急激な放散(多様化)をしたと推定されていて、それが被子植物の誕生(2億年~1.4億年前)・多様化とどう関連するのか興味深い。ぜひ、植物の進化・昆虫の進化・地質時代を盛り込んだ表をつくり、それを片手に講演を楽しんでもらいたい。
本シンポジウムでは、山尾 僚博士が「実生の被食回避」、吉永直子博士が「植物二次代謝産物と植食者」、岡本朋子博士が「花の匂いと生殖隔離」について話題提供し、最後にpollination chemical ecologyの第一人者であるコーネル大学のRaguso教授に、「ハエ目昆虫の多様性と花の進化」について講演していただく。
- 座長: 小滝 豊美(農業・食品産業技術総合研究機構・生物機能利用研究部門) | 松山 茂 (筑波大学・生命環境系)
- 13:30~13:35 会長挨拶 矢野 栄二 (京都大学生態学研究センター)
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13:35~14:05 山尾 僚 (弘前大・農学生命科学部)
「種子における生物情報の利用と被食回避
Use of biological information and herbivory avoidance in seeds」 -
14:05~14:35 吉永 直子 (京都大・農学研究科)
「植物イリドイドをめぐるチョウ目昆虫の様々な戦略
Lepidopteran insects adopt various strategies against plant iridoid toxicity」 -
14:35~15:05 岡本 朋子(岐阜大・応用生物科学部)
「花の匂いが支える生殖隔離機構 - 特定の昆虫を花に導く誘引戦略
Floral scents produce reproductive isolation by attracting specific pollinators」 - 15:05~15:20 休憩
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15:20~16:10 Robert A. Raguso (Cornell University, USA)
「Don't forget the flies: dipteran diversity and its consequences for floral evolution
ハエのことを忘れちゃいけない: ハエ目昆虫の多様性とそれが花の進化に及ぼす影響」 - 16:10~16:40 総合討論